夕張メロンGI登録
夕張メロンが
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「夕張メロン」のGI登録証 |
「夕張メロン」栽培の起源は、大正12~13年頃 までさかのぼることができ、昭和5年頃には、 数 種の栽培も試みたが、十分な糖度が得られずに 立ち消えとなり、当時の食糧事情から、 次第に減 少し戦争の激化とともに消え去っていった。
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安定した品質と優れた味わい
夕張メロン」 は、昭和35年のスタート当初から一元出荷全量体制を確立し、品質の安定化は他に 類を見ない産地として高く評価され、54年から全国初の産地直送をスタートさせ、日本中でその名 が知られるようになった。
「夕張メロン」は、父親「スパイシーカンタロープ」と母親「アールスフェボリット」の一代交配種で、 昭和36年に品種名「夕張キング」と命名された。
一代交配種は、父親と母親の優れた性質を、その子一代に限り発揮する遺伝学上の特性を利用し た品種である。果肉は、オレンジ色で繊維質が少ないことから非常に柔らかく、ジューシーであり、 瑞々しさや口に広がる甘さと芳醇な香りを持つメロンである。
GI登録申請に至った経緯
GI登録の申請に至ったきっかけは、主に次の3点である。
第一のポイントは「国が『夕張メロン』にお墨付きをあたえる」ということの意義である。国が認め た産品を栽培している生産者たちは、そのことを誇りに思い、特に若い生産者にとっては長く「夕張 メロン」をつくり続けていくうえで励みになると考えた。
第二に、JA夕張市では、地域団体商標制度が開始される以前から、「夕張メロン」を苦労の末に 商標登録し、独自にブランドを守ってきた。その商標数は150件にも上る。そのうえで、「夕張メロン」 という産品に国がお墨付きをあたえ、模倣品に対する保護をしてもらえるこの制度は、仮に訴訟に なった際も負担がなく、市場流通においてもさらなる差別化が図れるものと期待し、申請をするに 至った。
海外に対する商標はアジア圏の一部の国で取得していたものの、模造品被害が発生した際、訴訟 費用などの負担は莫大なものになるのと同時に、調査が難しい状況であることは理解していた。そう したなかで、このGI制度は、日本国 と他国の相互保護協定が結ばれた国 では、GI産品が保護されるというこ とも申請のメリットである。
申請の作業は比較的スムーズに進 んだ。これは、当JAが五十数年培っ てきた栽培技術の蓄積と夕張市との 結びつきの強さがあったこと、そして 何より「夕張メロン」の品種管理方法 と検査体制をはじめとする組織づく りができていたからに他ならない。ま た、GIサポートデスクなどから申請 書の作成方法などについてアドバイ スをいただいたことも助けとなった。
こうして平成27年、「夕張メロン」 はGI登録されたのである。
海外への販促成功に期待
国内では、先人の苦労と努力により、現在では「夕張メロン」ブランドとして多くの方々から評価い ただいているGI登録を受けたことは、海外への取り組みを行ううえでは「国からのお墨付き」をあた えられたということであり、さらなる販路の拡大と海外での「夕張メロン」の認知度向上に期待が膨 らむ。
登録後の効果と模擬品対策
GI登録となったことで、生産者とわれわれJAの関係は登録前と変わらないものの、GI登録され たことで「『夕張メロン』は地域との結びつきが強い産品である」ことが、改めて明確になったといえ る。そして何より「夕張メロン」の品質、ブランド価値の向上への意識と責任が高まり、今まで以上に 生産と販売に努力していかなければならないと再確認ができたことが大きな効果としてあげられ る。
また、海外での模倣品については、できる限りの対抗措置として、商標登録の出願を行っており、 アジア圏の数ヵ国で取得している。商標登録については、取得するのに莫大な労力・時間・費用がか かり、登録後も、模倣品への対抗措置をとるには、大変な労力を要する。
平成28年度にはタイで「夕張メロン」の模倣品が横行し、さらに香港でも流通していることが確認 され、ただちに対抗措置を講じることになった。農林水産省は、GIの不正使用に当たるとして、生産 業者に警告状を送付し、名称を使用しない旨の誓約書を提出させることに成功した。今後も農林水 産省は、各国とGI登録産品の相互保護協定を締結し、産品の保護にあたるとしており、模倣品流通 など不正使用の防止策として期待が持てる。
ほかのGI登録生産者団体とともに官房長官を表敬訪問